この「日本共産党党章草案」は党の規約と綱領をまとめて一つの文書にしたもので、1958年に開催された日本共産党第7回大会において中央委員会によって提出されたものの、綱領部分に少数意見があったため審議未了となり、規約部分のみ採択されたものです。
日本共産党党章(草案)
大会は、中央委員会の提出した党章草案の政治綱領部分について、宮本中央委員会常任幹部会員の報告を受け、これを討議した。討議は、現状規定と革命の性格に集中されたが、討議が終結に至らなかったので、大会は、綱領問題についての小委員会に付託し、一致点を見出すよう求めた。
小委員会は、大会の付託にしたがい、さらに討議を続行したが、行動綱領の部分については基本的一致がみられたにもかかわらず、現状規定と革命の性格については、なお重要点における不一致が解決されなかった。したがって、小委員会の大多数の意向は、この党章草案の政治綱領部分を直ちに大会で採決せず、この中央委員会提出草案を今後新中央委員会の指導の下にひきつづき討議すべき草案として大会がみとめ、今後適当な機会に最終的な決定をおこなうことを求めた。
中央委員会は、小委員会の経過と意向にもとづき大会にたいして、つぎの新らしい提案をおこなった。
1、党章草案のなかにある行動綱領の基本にかんする部分を当面の行動綱領として採択すること。
2、党章草案の綱領の部分の(一)(七)(八)(九)(十)を規約の前文として採択し、この前文と規約本文とあわせて、日本共産党規約とすること。
3、党章草案の綱領部分は全体として、この大会では最終的決定をおこなわず、中央委員会の指導の下にひきつづき討議すべき草案と承認すること。同時にいわゆる五一年綱領はこれを廃止すること。
4、綱領部分の最終決定は、今後適当な機会におこなうこと。
大会は、大多数によって、中央委員会のこの提案を承認した。
綱領
(一)日本共産党は、日本の労働者階級の前衛部隊であり、労働者階級のいろいろな組織のなかで最高の階級的組織である。
党は、自発的意志にもとづき、自覚的規律でむすばれた共産主義者の、統一された、たたかう組織である。
党の目的は、日本の労働者階級と人民を搾取と抑圧から解放し、 日本に社会主義社会を建設し、それをつうじて高度の共産主義社会を実現することにある。
党は、マルクス・レーニン主義を行動の指針とする。
マルクス・レーニン主義のみが社会発展の法則をただしく説明しており、社会主義、共産主義を実現するみちをただしくしめしている。党はマルクス・レーニン主義の弁証法的唯物論と史的唯物論の世界観を堅持し、あらゆるかたちの観念論と形而上学に反対する。
党はつねに日本の具体的現実から出発し、マルクス・レーニン主義の原則を、日本社会の特殊性と幾百万大衆の実際闘争に創造的に適用し、ただしい革命的理論の発展をはかる。
党はマルクス・レーニン主義の原則をゆがめるあらゆるかたちの修正主義とたたかう。党は、また党内の教条主義、経験主義その他の主観主義的偏向に反対し、左右の日和見主義の理論と実践にたいしてたたかう。
ただしい革命的理論がなくては、革命的事業に勝利することはできない。党はあらゆる理論軽視に反対し、つねに理論と実践をむすびつける原則をもって党の理論的思想的活動をつよめる。
(二)日本共産党は、第一次世界大戦後における世界労働者階級の解放闘争のたかまりのなかで、十月社会主義大革命の影響のもとに、わが国の進歩と革命の伝統をうけついで、一九二二年七月十五日、日本労働者階級の前衛によって創立された。
党は、当時の日本の支配体制の特殊性にもとづいて、ブルジョア民主主義革命を遂行し、これを社会主義革命に発展転化させて、社会主義日本の建設にすすむという方針のもとにたたかってきた。その後の事態の発展は、この方針が基本的に正しかったことを証明している。
党は、さまざまなきびしい試練に直面したが、労働者階級の不屈の力により、プロレタリア国際主義にもとづいて、日本人民解放のためにたたかってきた。
党は、日本人民を無権利状態においてきた絶対主義的天皇制の軍事的警察的支配とたたかい、天皇制をたおし民主的自由をかちとるためにたたかってきた。
党は、半封建的地主制度をなくし、土地を農民に解放するためにたたかってきた。
党は、独占資本主義の搾取によってくるしめられている労働者階級の生活をてってい的に改善するためにたたかい、またすべての勤労人民、知識人、婦人、青年の権利の獲得と生活の改善のためにたたかってきた。
党は、進歩的革命的文化の創造と普及のためにたたかってきた。
党は、日本帝国主義のソビエト革命と中国革命への干渉戦争に反対し、第二次世界大戦に道をひらいた中国にたいする侵略戦争に反対し、世界とアジアの平和のためにたたかってきた。
党は、日本帝国主義の植民地であった朝鮮、台湾の解放と、アジアの植民地・半植民地諸民族の完全独立を支持してたたかってきた。
党は、これらのたたかいをつうじて、科学的社会主義であるマルクス・レーニン主義の思想を、わが国の人民大衆のあいだにひろげるためにたたかってきた。
党は、天皇制権力のやばんな弾圧のなかで、活動に重大な困難とつまずきをきたしたが、多くの同志たちは、敵の追及や投獄に屈せず、党の旗をまもってたたかった。帝国主義戦争と警察的天皇制の暴虐によって、無数の人民の血がながされ、国土は焦土となったがすくなからぬ共産主義者が、日本人民の忠実な働き手として、平和と自由のためにたたかい、その生命をささげた。
第二次世界大戦における日独侵略ブロックの敗北、ソ連を中心とする反ファシスト連合国と世界民主勢力の勝利は、日本人民の解放のための内外の諸条件を大きくかえた。日本帝国主義は、重大な打撃をうけ、ポツダム宣言は、天皇制の支配のもとに苦しんでいたわが国人民が立ちあがるみちをひらいた。
党はポツダム宣言の完全実施と民主主義的変革をてってい的になしとげることを主張し、天皇制の廃止、軍国主義の一掃、国の人民的復興のために、労働者階級を中心とする民主勢力の先頭にたってたたかってきた。しかるにわが国を占領した連合軍の主力が、原爆を武器としてあたらしい世界支配をねらうアメリカであったことは、日本人民の運命に重大な屈辱をもたらす第一歩となった。
世界の民主勢力と日本人民の圧力のもとに一連の「民主的」措置 がとられたが、アメリカ帝国主義者はこれをかれらの対日支配に必要な範囲にかぎり、民主主義革命を流産させようとした。アメリカ 帝国主義は、世界支配の野望を実現するためにポツダム宣言をふみ にじり、日本は事実上かれらの単独支配のもとにおかれ、日本人民は、アメリカ帝国主義への隷属状態におちいった。アメリカ帝国主義は、飛躍的に発展強化してゆく社会主義世界にたいする戦争を準備するため、また植民地主義の鎖をたちきって立ちあがりつつあるアジア諸民族を支配するため、日本をその軍事基地としてかためつつ、日本の人民大衆の解放闘争を弾圧するとともに、独占資本を目したの同盟者とする政策を追求した。
党はアメリカ帝国主義の占領支配と日本独占資本の売国政策に反対し、即時全面講和を主張しつつ、民族独立、民主主義、人民生活向上の統一戦線を組織するためにたたかってきた。
(三)中国革命の偉大な勝利、世界と日本の平和と民主主義と社会主義の勢力の前進に直面して、アメリカ帝国主義は朝鮮にたいする侵略戦争をおこないながら、日本をかれらの世界支配の重要拠点としてかためるみちをすすんだ。そしてアメリカ帝国主義は、かれらの目的を達するために、あたらしい手段をとった。一方ではポツダム宣言の拘束をまったくすてさり、日本をソビエト連邦と中華人民共和国に敵対させ、日本の支配勢力をより積極的にアメリカ帝国主義に同調させ、日本の軍国主義を復活し、アジア人をアジア人と たたかわせるために、また他方ではポツダム宣言にもとづく全面講和にたいする内外民主勢力の要求をそらし、アジア人をアジア人とたたかわせるために、また他方ではポツダム宣言にもとづく全面講和にたいする内外民主勢力の要求をそらし、おさえるために、一九五一年、アメリカ帝国主義と日本の売国的独占資本の共謀によって、サンフランシスコ平和条約と日米安全保障条約が締結された。
アメリカ帝国主義の全面的占領支配は、半占領状態にかわり、日本政府の統治権は以前よりも拡大されたが、真の独立は回復されなかった。沖縄、小笠原は、ひきつづきアメリカの直接の軍事占領下におかれ、わが国には数多くのアメリカの軍事基地がある。そして行政協定、MSA協定その他の諸条約にみられるように、アメリカ帝国主義は、日本の外交、軍事、金融、貿易に重要な支配力をもっている。
げんざい、日本を基本的に支配しているのは、アメリカ帝国主義と、それに従属的に同盟している日本の独占資本であり、わが国は、高度な資本主義国でありながら、アメリカ帝国主義になかば占領された事実上の従属国となっている。
戦後の農地改革は、妥協的なブルジョア的変革として、いろいろ不徹底な面をのこしたが、半封建的地主制度は基本的には解体され た。日本の独占資本は、アメリカ帝国主義とむすびつき、労働者階級をはじめとする勤労人民大衆への搾取をつとめることによって復活強化し、売国的反動勢力の中心となった。絶対主義的天皇制はブルジョア君主制の一種となり、天皇の地位は、アメリカ帝国主義に従属的に同盟している日本独占資本の政治的思想的支配の道具となっている。日本独占資本は、アメリカ帝国主義の原子戦争計画にわが国をしばりつけ、日本の軍国主義を強化しながら、帝国主義的復活をはかり、対外侵略の準備さえすすめている。
アメリカ帝国主義と日本独占資本の合作によるサンフランシスコ体制のもとで、労働者、農民をはじめとする広はんな人民諸層の平和と独立のねがいはふみにじられ、生活と権利は圧迫されている。
アメリカ帝国主義と日本独占資本は、憲法改悪をくわだて、政治的反動をつよめ、アメリカの全面的占領の時期からひきつがれた弾圧法視をそのままのとし、さらにあたらしい弾圧政策をもって、労働者階級をはじめとする人民大衆の進歩のためのたたかいを抑圧している。
しかし、かれらの反動支配は多くの矛盾をもっている。国際民主勢力と連帯した労働者階級を先頭とする人民の運動と組織は、民主主義的権利を武器として政治的反動をはばみ、前進しうる強力な力 に成長してきている。
第二次世界大戦後、国際情勢は根本的にかわった。社会主義が一国のわくをこえて、一つの世界体制となり、資本主義諸国の労働者運動はますます発展し、植民地体制の崩壊が進行し、帝国主義の支配を足もとからゆるがしている。
ソビエト連邦、中華人民共和国をはじめとする社会主義諸国の平和政策の前進、世界の平和勢力のいまだかつてない拡大とその組織の発展、世界人口の半数以上を結集した広大な平和地域の成立によ って、戦争はさけることのできないものでなくなり、平和共存が世界の広はんな人民によって支持されるようになった。こうした重要 な変化は、日本人民の解放闘争の発展にとって有利な国際的条件となっている。
(四)労働者階級の歴史的使命である社会主義へのみちは、このみ ちをとざしているアメリカ帝国主義と、日本の独占資本を中心とする勢力の反民族的な反人民的な支配体制をたおし、人民の民主主義国家体制を確立する革命を通じてこそ、確実にきりひらくことができる。
したがって、党の当面の中心任務は、アメリカ帝国主義と独占資本を中心とする売国的反動勢力の戦争政策、民族抑圧と政治的反動、搾取と収奪に反対し、平和、独立、民主主義、生活向上のための労働者、農民、勤労市民、知識人、婦人、青年、学生、中小企業家をふくむすべての人民の要求と闘争を発展させることである。そして、そのなかで強力で広大な統一戦線をつくり、その基礎のうえに平和・独立・民主の日本をきずく人民民主主義権力を確立することである。
したがって、わが党の当面する行動綱領の基本は、つぎのとおりである。
党は、世界の平和と、社会制度のことなる諸国のあいだの平和共存をめざしてたたかう。党は、すべての国との国交を正常化し、経済文化の交流を発展させ、日本人民と世界各国人民の友好親善関係をひろめるためにたたかう。党は、アメリカ帝国主義とわが国の売国的反動勢力が共同しておこなっている社会主義諸国とアジア・アフリカ諸民族への侵略戦争準備、原子戦争のいっさいの準備に反対する。
党は、アメリカ帝国主義と、日本の独占資本を中心とする反動勢力の戦争と反民族的・反人民的抑圧の体制であるサンフランシスコ体制の打破、すなわち、いっさいの売国的条約・協定の破棄、沖縄・小笠原の日本への返還、全アメリカ軍の撤退と軍事基地の一掃なと民族の完全独立のためにてってい的にたたかう。
党は、平和・民主主義・社会主義のために努力している世界のすべての人民大衆と手をたずさえ、世界のあらゆる反帝国主義・反植民地主義運動と連帯してたたかう。
党は、「万国の労働者団結せよ」の精神にしたがって、プロレタリアートの国際的団結をつとめるために努力する。ソ連を先頭とする社会主義陣営、全世界の共産主義者、すべての人民大衆が人類の進歩のためにおこなっている闘争をあくまで支持する。
党は、日本人民の民主的権利をうばいさろうとするすべての反動的なくわだてとたたかい、議会制度・地方制度の改悪、憲法改悪に反対する。アメリカ帝国主義と日本の反動勢力が人民のうえにおしつけているいっさいの弾圧諸法令、弾圧諸機関を撤廃し、人民の民主的権利をひろげるためにたたかう。天皇主義的・軍国主義的思想を克服し、半封建的なのこりものをなくすためにたたかう。
党は、日米支配層が労働者、農民、その他の勤労人民にくわえている搾取と収奪に反対し、人民大衆の生活を根本的に改善するために努力する。
党は、すべての労働者の団結権・羅業権・団体交渉権を確保し、低賃金、労働強化に反対し、最低賃金制と週四十時間労働制、労働者の生活と権利を保障する労働法のためにたたかう。
党は、アメリカ軍と自衛隊のための土地とりあげに反対する。また小作地の取上げに反対し、小作地の国費による買上げと、現耕作者への譲渡のためにたたかう。国有・公有・大山林所有者の林野なまた土地のすくない農民に解放するためにたたかう。
党は、農民の生活と権利をまもり、重い税金、独占物価に反対し、営農資金とひきあう農産物価格を要求し、とくに農林労働者、貧農のために土地と賃金と仕事を要求してたたかう。
党は、漁民の生活・漁業条件の改善のためにアメリカ軍の漁場制限、演習場の廃止、漁業にのこっている半封建的な遺制の一掃、独占資本の圧迫の排除、漁業協同組合の民主化、資金・資材の獲得な どのためにたたかう。
党は、手工業者、小商人、自由業者など勤労市民の営業と生活を根本的に改善するためにたたかう。
党は、未解放部落にたいする半封建的差別待遇がなお根づよくのこっている状態をなくすためにたたかう。
党は、知識人、婦人、青年、学生の生活が苦しみと不安定のなかにつきおとされている状態を根本的に打開するためにたたかう。
党は、労働者、農漁民、勤労市民その他人民各階にわたる社会的貧困と失業、生活の苦しみを解決する総合的社会保障制度の確立のためにたたかう。
党は、アメリカ帝国主義の圧迫と日本独占資本の収奪と支配に反対する中小企業家の闘争を支持する。
党は、日本文化の意義ある民族的伝統をうけつぎひろめ、科学、技術、教育の向上とその民主主義的発展のために、思想と表現の自由のためにたたかう。
党は、アメリカ帝国主義と日本独占資本の財政経済政策に反対し、日本経済にたいする外国資本の支配の排除および独占資本にたいする人民的統制を実施し、それを通じて金融機関と重要産業の独占企業の国有化への移行をめざす。
(五)日本共産党は、以上の要求の実現をめざし、平和と独立、民主主義、生活向上のためにたたかうなかで、労働組合、農民組合をはじめとする人民各階層の大衆的組織を確立し、ひろげ、つよめるとともに、民主党派、 民主的な人びととの共同と団結をかため、民 族民主統一戦線をつくりあげる。
この民族民主統一戦線は、労働者階級の指導のもとに、労働者、 農民の同盟を基礎とし、そのまわりに勤労市民、知識人、婦人、青年、学生、中小企業家、平和と祖国を愛し、民主主義をまもるすべての人びとを結集するものである。
日米支配層の弾圧、破壊、分裂工作、思想攻撃などとたたかいながら遂行されるこの偉大な闘争で、党は人民大衆とかたくむすびつき、その先頭にたって先進的役割をはたさなければならない。そして、とくに労働者階級をマルクス・レーニン主義の思想でたかめ、その階級的戦闘性と政治的指導力をつよめなければならない。民族民主統一戦線の発展において、決定的に重要な条件は、わが党を拡大強化し、その政治的指導力をつとめることである。
この闘争において党と労働者階級の指導する民族民主統一戦線勢力が積極的に国会の議席をしめ、国会外の大衆闘争と結びついてたたかうことは、重要な意義をもっている。こうして国会で安定した過半数をしめることができるならば、国会を反動支配の道具から人民に奉仕する道具にかえ、革命の条件をさらに有利にすることができる。
党は、人民を民族民主統一戦線に結集し、その基礎のうえに政府をつくるために奮闘する。これは、アメリカ帝国主義と日本反動勢力のあらゆる妨害に抗しての闘争である。この政府が革命の政府となるかどうかは、それをささえる民族民主統一戦線の力の成長の程度にかかっている。
党と労働者階級の指導的任務が十分に発揮されて、強大な民族民主統一戦線が発展し、反民族的・反人民的勢力を敗北させるならば、そのうえにたつ政府は革命の政府となり、わが国からアメリカ帝国主義をおいはらい、わが国の売国的反動支配をたおし、人民の手に権力をにぎることができる。この人民の革命権力は、世界の平和・民主主義・社会主義の勢力と連帯して独立と民主主義の任務をなしとげ、独占資本の支配を排除し、君主制を廃止し、反動的国家機構を根本的に変革して、名実ともに国会を国の最高機関とする人民民主主義国家体制を確立する。
高度な独占資本主義の段階にあるわが国のこの革命はそれ自体社会主義的変革への移行の基礎をきりひらく任務をもつものであり、 それは、資本主義制度の全体的な廃止を目指す社会主義的変革に急速にひきつづき発展させなくてはならない。すなわちそれは、独立と民主主義の任務を中心とする革命からひきつづき社会主義革命に 発展する人民民主主義形態の革命である。
(六)日本人民の真の自由と幸福は、社会主義の建設によってのみなしとげられる。内外独占資本の搾取からの解放、まずしさからの最後的な解放を保障するものは、労働者階級の権力、すなわちプロレタリアート独裁の確立、生産手段の社会化、生産力のゆたかな発展にもとづく社会主義的な計画経済である。党は、勤労農民および零細・中小企業家にたいしては、その利益を尊重しつつ、説得をつうじてかれらを社会主義社会へみちびいていく。
社会主義社会は共産主義社会の第一段階である。この段階においては人による人のいっさいの搾取が根絶され、階級による社会の分裂はおわる。この社会主義日本では「能力におうじてはたらき、労働におうじて報酬をうける」原則が実現され、これまでになくたかい物質的繁栄と精神的開花、ひろい人民のための民主主義が保障される。共産主義のたかい段階では、生産力のすばらしい発展と社会生活のあたらしい内容がうちたてられるとともに、人間の知的労働と肉体労働の対立が消えさるだけでなく、「各人は能力におうじてはたらき必要におうじて生産物をうけとる」ことができるだろう。組織的、かつ系統的な暴力、一般に人間にたいするあらゆる暴力は廃絶される。こうして、原則としていっさいの強制のない、国家権力そのものが不必要になる共産主義社会、真に平等で自由な人間関係の社会が生まれる。
日本共産党はこのような社会を日本につくるためにたたかうものである。
(七)以上の政治綱領を実現するには、党組織と党員の人民大衆のなかでの活動と、党にみちびかれる人民大衆の自覚的なたたかいが必要である。
革命は、労働者階級をはじめとする幾百万人民大衆が、おこなうものである。党の任務は、歴史の真の創造者であるとの人民大衆の利益のために活動し、かれらが不敗の革命的勢力に発して、みずからを解放する革命の事業を達成するよう援助し、指導することにある。党の政策の最高の基準は、人民の利益であり、党と人民の利益は一致する。したがって、党員はふかく人民大衆のなかにはいって活動し、党と大衆のむすびつきをひろめ、つよめなくてはならない。
党は、マルクス・レーニン主義にもとづいて情勢と敵味方の力関係をただしく判断し、大衆の要求や考え、その行動や創意を分析、 総合し、系統的に集約して、党の方針と政策をつくりあげる。そしてそれを大衆のなかにもちこみ、党の宣伝、組織活動をつうじて、 それを大衆自身のものとして実践し、実践のなかでそのただしさを 検証する。こうして、はじめて党は、人民大衆をただしくみちびくことができる。
したがって、党は、一定の活動ののち、必らずそれを総括し、成果と欠陥をあきらかにし、教訓をひきださなくてはならない。こうしてこそ、党と大衆の認識をたかめ、革命の事業を成功にみちびくことができる。
党の指導は、人民大衆に密着しておこない、これからとびはなれても、これに追従してもならない。それは、できるだけひろい人民の支持をうけるような道理にかなった立場に立って、切実な人民の利益を代表し、しかも力関係に応じて、節度あるものでなくてはならない。
このようにして、党と人民大衆との相互信頼とかたい団結がつよめられ、党と人民の革命的力量を着実にましていくことができる。
これが、党の政治的、組織的方針としての大衆路線である。党が、人民大衆からはなれ、その利益について鈍感になったり、または闘争を大衆に命令したり、党だけが遊離して請負ったりすることは、すべて大衆路線をふみはずすものである。したがって党は、これらの人民大衆から遊離するいっさいの傾向とたたかう。
(八)日本共産党の組織原則は、民主主義的中央集権制である。党は民主主義の原則と中央集権制の原則を正しく統一する。
党内民主主義の保障、かっぱつな党内討議は、党員および党組織 の積極性と創意性をたかめ、党生活を生き生きとしたものにし、自覚的な規律をつくるとともに、党内のゆたかな意見と経験を集約し、党員の認識をひろげ、個人的指導をはいして集団的指導を実現し、党の指導力をたかめるためにかくことができない。
しかし、そのような党内民主主義が、党の中央集権制と結合し、 その基礎となって、はじめて党が全党員と全党組織の意志と行動を統一して強力な実践力を発揮し、どんな困難にもうちかち、党と人民の敵にうちかつ戦闘的組織となることができる。
決定にたいしては少数は多数にしたがい、下級は上級にしたがい、積極的にこれを実行しなくてはならない。
こうして党内民主主義は中央集権制のもとにおける民主主義であり、また党の集中制は、党内民主主義を基礎としてはじめて強固なものとなる。したがって、党員は党内民主主義を無視し、党員の創意性をおさえる官僚主義や保守主義とたたかうとともに、集中的指導をよわめる無原則的な自由主義や分散主義とたたかわなくてはならない。
党の指導原則は、集団的な知恵と経験にもとづく集団指導と個人責任制の結合である。
(九) 民主主義的中央集権制にもとづき、党員の自覚と厳格な規律による全党の統一と団結は、党の生命であり勝利の保障であ る。したがって、すべての党員は、いかなる場合にも党の統一をかたく守らなくてはならない。意見がちがうことによって組織的な排除を行ってはならない。また党規律をみだし、決定を実行せず、統一をやぶり、派閥をつくり、分派活動をおこなうことは、党を破壊する最悪の行為である。党内では、党の政治方針や組織原則をそこなうような行動はゆるされない。
党の規約は、党活動と党生活の基準であり、すべての党員は規約を尊重し、これを軽視したり、無視したりしてはならない。党員は、全党の利益を個人の利益の上におき、誰でも党のうえに個人をおいてはならない。
(十) 党と人民の歴史的事業をなしとげるためには、党は、敵にたいする党と人民の着実な勝利と成果をつみあげるとともに、党活動の欠陥とあやまりをたえず見出し、批判と自己批判の方法をもって克服し、党と人民の教訓としなくてはならない。どのような政党でも、どのような個人でも、その活動のなかに欠陥とあやまりはさけ られない。しかし、日本共産党とその党員にとっては、同じあやまりをくりかえしておかさず、重大なあやまりをおかさぬことが、敵にたいする勝利のため必要である。
欠陥とあやまりをみようせず、あるいは、これをおしかくして現状に甘んずることは、党の戦闘力をゆるめる。しかし欠陥とあやまりを克服するには、打撃的方法をもちいないで節度をもって同志的にたがいに相手をたかめるようにおこなわなくてはならない。党は、党員の相互の信頼と協力の原則により、批判と自己批判をつくしてさらにかたい結に到達し、党内のあやまった思想をただしく解決する。
日本共産党員は、わが労働者階級の前衛としてのほこりと自覚をもって、かがやかしい共産主義の終局の勝利を確信し、あらゆる困難にうち勝って、断固として敵とたたかう戦闘的精神をもたなければならない。敵に屈服して党と階級の利益を裏切るような行為は、 共産党員としての最大の恥辱であり、最大の犯罪である。党員は修養と学習にはげみ、つねに言行を一致させ、誠実勤勉に不動の信頼をもって人民大衆のなかで活動し、広範な大衆と団結しなくてはならない。党員はつねに進取の気風をもち、行動性をおもんじ、どんな困難をもおそれず、忍耐づよく、謙虚に、精力的に活動しなくてはならない。
日本共産党とすべての党員は、党の革命的伝統と戦闘的精神をうけつぎ、つねに日本人民とともにすすみ、日本民族のすぐれた歴史的遺産をうけつぎつつ、平和と独立と民主主義と生活向上の新日本のためにたたかい、かがやかしい社会主義と共産主義の実現にむかって奮闘しなくてはならない。
規約(略)
『前衛』1958年7月臨時増刊
アイキャッチ画像出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Symbol_of_jcp.jpg グラインドマーチャーシュ, CC BY-SA 3.0 https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0, ウィキメディア・コモンズ経由で
コメント